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不動産オーナー様に特有の課題
不動産業を営む皆様、不動産オーナーの皆様には業界特有のお悩みや、お困りごとがあるかと思います。
下記ではそれぞれの問題に対する特徴やポイントについて記載しております。
法律が絡むお困りごとに関しては、その対処法によってトラブルに発展してしまう可能性があります。
皆様の安定した経営、運営のためにも、問題に対して適切な対処を行うことは必要不可欠となります。
滞納への対処
早期に督促
家賃や地代、管理費の滞納は、早期に、督促を行う必要があります。
なぜなら、早い段階で督促を行わなければ、少しくらい滞納しても問題ないと認識されるおそれがあります。滞納者の立場に立って、考えてみてください。早い段階で督促がある相手と、督促がない相手、どちらの方が支払い義務を強く感じるでしょうか?
また、早い段階で督促を行わなければ、滞納金額はどんどん膨れ上がる危険性があります。金銭的余裕がなく滞納しているケースであれば、早い段階で督促を行い、必要に応じて収支計画を立てなければ、早晩、滞納が積み重なることが予想されます。
例えば、滞納の一類型である奨学金返還の延滞について、独立行政法人日本学生支援機構による令和3年度の調査結果によれば、延滞者が奨学金の返還を延滞している理由は、「本人の低所得」が 63.8%で最も高く、次いで「奨学金の延滞額の増加」が 36.7%となっています。
早期に督促を行い、必要に応じて収支計画を立てることが滞納への適切な対処法となります。
効果的な督促
督促をする場合、オーナー様や管理会社様は、電話で督促をしたり、SMSや書面で督促をしたり、場合によっては直接訪問して督促されているかと思います。
滞納者の属性に応じて効果的な督促の方法・内容は変わりますので、属性を無視した画一的な処理ではなく、属性に応じた効果的な督促を行うことが重要です。内容証明郵便を利用する方法、支払督促を利用する方法など、具体的な督促の方法や督促の内容については、専門家の弁護士のアドバイスに従って決めていくことが効率的な回収に繋がります。
強制退去を実現するには
家賃滞納者を追い出したい、更地にしたいので建物の入居者に出て行ってもらいたいなど、強制退去を実現するためには、いくつもの注意点があります。
実力行使は厳禁
借主が家賃を滞納しているからといって、玄関扉が開かないよう無断で鍵を交換したり、扉に板を打ち付けるなど工作したり、勝手に部屋の中に立ち入り、荷物を外に搬出したりすると、オーナー様が訴えられたり、最悪のケースでは罪に問われたりする可能性もあります。
日本では、実力行使は厳禁です。
速やかな裁判手続への着手
強制退去を実現するには、①契約解除、②訴訟の提起、③強制退去の執行を順に行っていく必要があります。
強制退去が完了する時期はケースバイケースです。借主が明渡しを争った場合など、明渡しが完了するまで1年以上を要するケースもあります。そのため、強制退去を求める意向が固まった段階で、速やかに手続に着手することをお勧めします。
また、①契約解除、②訴訟の提起、③強制退去の執行のすべてにおいて、法律や裁判例の知識が必要となります。
例えば、建物の賃貸借契約の場合、入居者とオーナー様との間の信頼関係が破壊されていないと裁判所に判断されると、そもそも契約の解除が認められませんが、弁護士であれば、①契約解除を行う以前の段階で、信頼関係の破壊が認められるか否かを慎重に検討し、状況に応じた必要な措置をとっていくことが可能です。
法律や裁判例の知識がなければどのタイミングで何をすべきかが分からず、場合によってはオーナー様が自分で自分の首を絞める結果となっている最悪なケースも散見されます。
損失を最小限に抑え、利益の最大化を図るためにも、強制退去を進める場合は専門家の弁護士に依頼されることを強くお勧め致します。
単身高齢者死亡時の原状回復への備え
近年、一人暮らしの高齢者が増加傾向にあると言われており、一人暮らしの単身高齢者が賃貸住宅に入居中に亡くなった場合、相続人と連絡がとれず、賃貸借契約を終了させ、居室内にそのまま残された物(残置物)を円滑に処理することが困難になっているという話もあります。
国土交通省国土交通政策研究所の作成にかかる賃貸住宅等における残置物問題に関する検討会報告書によれば、単身高齢者等の単身賃借人が亡くなった後の残置物処理の費用の額は、見積事例において1件当たり平均で約40万円程度かかり、内訳は人件費、運搬費、梱包費、処分費、特殊作業費(エアコン外し等)、鍵費(鍵の解錠、施錠にかかる費用)等とのことであり、決して安い金額ではありません。
オーナー様としては、賃借人の連帯保証人又は相続人に負担をしていただきたい費用かと思われますので、専門家の弁護士のアドバイスを受けながら、段階を踏んで、交渉を進めた方が良いでしょう。
また、生前のうちに、単身高齢者の入居者に対して、法律専門家との死後事務委任契約の締結し、自宅の残置物処理を含む自らの死亡後の諸々の事務手続を一括して委任しておくよう推奨することも考えられます。
賃料増額請求・減額請求
不動産業経営者の皆様、不動産オーナーの皆様には賃料増額を請求したい場面や、拒否された交渉をやり直したい場面があるかと思います。
賃料増額の交渉には資料の事前準備や、法的根拠のある交渉等、高度なやり取りが必要になる可能性が高いです。
そのため、交渉拒否やトラブルのリスク低下や、紛争化した際の早期対処には専門家である弁護士が必要です。
【増減請求の際の考慮要素】
賃料増額請求、減額請求をする際に考慮されるポイントは、以下のとおりです。
①租税その他の公課(負担)の増減
(土地の場合は、固定資産税や都市計画税、建物の場合は、減価償却費、維持修繕費、公租公課、損害保険料、土地に対する公租公課(借地権付き建物であれば地代相当額)の増減)
②土地(土地・建物)の価格変動その他の経済事情の変動
③近傍類似の土地(建物)の賃料相場の変動
④当事者間の関係性の変動
最高裁平成5年11月26日判決では、以下のとおり指摘されています。
原審は、「当初、当事者が代表者を同じくする会社であったという事情から、賃借人である被上告人が賃貸人である上告人を金銭的に援助するという意図の下に、客観的に適正な賃料額を大福に超えた高額な賃料が約定されたものの、その後、時の経過により右の事情が変更し、当事者間に特別な関係があるとはいえない状況になった結果、右賃料額が不相当となったとして、被上告人による賃料の減額請求を認めるものである。原審の右判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。」
【借地借家法】
借地借家法11条1項によれば、「地代又は土地の借賃が、土地に対する租税その他の公課の増減により、土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったとき」に地代の増額請求、減額請求ができます。
また、同法32条1項によれば、「建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったとき」に家賃の増額請求、減額請求ができます。
加えて、最高裁判所の判例によれば、以下のとおり、当事者間の個人的な事情(関係性)も、賃料額決定の重要な要素となっている場合は考慮することを示しています。
【最高裁平成5年11月26日判決】
借地法一二条一項の規定は、当初定められた土地の賃料額がその後の事情の変更により不相当となった場合に、公平の見地から、その是正のため当事者にその増額又は減額を請求することを認めるものである。したがって、右事情としては、右規定が明示する一般的な経済的事情にとどまらず、当事者間の個人的な事情であっても、当事者が当初の賃料額決定の際にこれを考慮し、賃料額決定の重要な要素となったものであれば、これを含むものと解するのが相当である。
顧問弁護士の活用を
賃料の増額請求や減額請求の対応をはじめとして、弊事務所は以上のような不動産オーナー様に特有の課題解決に注力しております。
特に法律が関わるお困りごとは、トラブルに発展するケースも少なくありません。弁護士であれば、お悩みに対して適切な対応を行いお悩みを解決するとともに、紛争化してしまった場合には早期に対処することが可能です。
多くのオーナー様からご支持を頂いている弊事務所の顧問サービスを是非一度ご利用ください。